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97式改LAPDblog

パトレイバー好きなおっさんが、軍事や思った事を徒然書く日記です 旧ブログ(FC2ブログ)から引っ越して来ました

【改訂版】装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか?

さる平成29年1月10日、防衛装備庁のサイトにて96式装輪装甲車の後継として試作中だった装輪装甲車(改)の試作品が納入されたと発表された。

防衛装備庁 : 試作品

サイトでは装輪装甲車(改)の試験動画や写真を見ることができ、既にネット上ではこの装輪装甲車(改)についての考察や批評が行われている。

今回の記事は装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか?という点について装輪装甲車(改)の簡単な紹介をしながら不安な点や海外製装輪装甲車と比較しながら述べたいと思う。

車両制限令による制限の為の限界

さて先ずは防衛装備庁のサイトにて公表された装輪装甲車(改)の主要諸元について見てみよう。

 

 装輪装甲車(改)主要諸元

 

全長×全幅×全高 約8.4m×約2.5m×約2.9m
乗員定数 11人
重量 約20t

 

車体の全長が8.4mと長く全幅が2.5mと幅が狭いのに対して全高が2.9mとかなりトップヘビーな車体に思えてしまう。さらに公開された装輪装甲車(改)の写真も見てみよう。

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車体側面はほぼ垂直で重心が高いのが見て取れる。なぜこの様な車体になってしまったかというと答えは道路法の車両制限令にある。この車両制限令では日本国内を走行する車両の幅が最大2.5mまでと決められている。

そしてなぜか自衛隊の車両もこの車両制限令を守らなければならず車幅が2.5mまでしか許可されないという長年のお役所体質のツケがあるのである。その為自衛隊の車両も全て(なぜか機動戦闘車だけ全幅が2.98mだったりする)全幅が2.5mまでと制限を受ける為、諸外国の装輪装甲車と比べて窮屈な車体になってしまうのである。

車体の全幅が2.5mまでと制限されてしまっては車体を昨今の装輪装甲車では必ず採用している対IED対策用のV字底面にしたら自然と面長で重心が高いという非常に不安定かつ将来の発展性を持たせる為のスペース確保が出来づらい車体になってしまい、結果的に派生型の種類も限られてしまう恐れがある。

さてここで自衛隊の装輪装甲車と諸外国の装輪装甲車の主要諸元がどの程度違うのかを見ていただきたい。

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諸外国の装輪装甲車の全幅が2.7~3.0m近くあるのに比べて日本の装輪装甲車の全幅がいかに狭いかお分かりいただけたと思う。いい加減防衛省国土交通省などの所管省庁は自衛隊車両への無意味な車両制限令の適用を辞めるべきである。

あくまで国内でしか使用しないだろうという意識が見える車両

さて次に装輪装甲車(改)について公表された情報に基づいて不安・懸念される2点について述べたいと思う。

今回、防衛装備庁が公開した装輪装甲車(改)の写真の中で気になった物がある。まずはその写真を見ていただこう。

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装輪装甲車(改)の車内の写真であるが気になったのは隊員が座るシートがIEDや地雷対策で今や当たり前となっているフローティング・シートではなく通常のシートである点である。

諸外国の装輪装甲車では最早標準装備といっても良いフローティング・シートではなくなぜ普通のシートにしたのであろうか?これでは車体にいくら対IED・地雷対策が施されていても触雷した場合、爆発の衝撃で中の隊員が車内の物や他の隊員と接触し負傷する危険性が非常に高いと言わざるを得ない。

ネット上では「自衛隊が戦うのは主に国内で、国内にIEDや地雷が埋設されている状況は考えられないから問題ない。」という声もあるが、例え国内での戦闘でIEDなどの攻撃が考えられないからといって可能性がゼロではない以上かつ隊員の生命保護を考慮すればあらゆる状況を想定して兵器を開発をするのが当たり前であるのだから量産型ではフローティング・シートに仕様を変更すべきである。

まあそもそも、当の開発者本人が開発概要でPKO派遣や離島防衛等の各種脅威に対応するために開発したと言ってるのですがね。

装輪装甲車(改)は、陸上自衛隊の現有96式装輪装甲車の後継として、国際平和協力活動、島しょ部侵攻対処等に伴う各種脅威に対応するため、防護力の向上を図った装輪装甲車(改)を開発しました。

次の懸念点を述べる前にまずこれまた防衛装備庁のサイトにて公開された装輪装甲車(改)の動画をみていただきたい。

 

www.youtube.com

動画内で装輪装甲車(改)には標準型・通信支援型・施設支援型と基本型の他に2つの派生型が存在する事が分かる。これは96式装輪装甲車の開発時に車体のファミリー化を考えていなかった反省からなのかはわからないが陸自も少しは車体のファミリー化を考える様になったみたいであるがこの動画では派生型として開発されるのかわからないタイプが2タイプある。

それはICV型と装甲救急車型の2タイプの派生型である。装甲救急車型については他の方に解説していただくとして私が装輪装甲車(改)をもし配備するのならICV型も同時に開発・配備すべきと考える。

その理由は装輪装甲車(改)を将来PKO派遣での車列警護や警戒時、国内では下車歩兵の火力支援として使用するのならば少なくとも30~35mmの機関砲を備えたICV型が必要であると思うからである。諸外国の装輪装甲車ではICV型の派生型を開発するのが当たり前であり、フィンランドAMV装輪装甲車のICV型などは35mm機関砲に加えてスパイク対戦車ミサイルを搭載するタイプを開発している事などを考えると、陸自も装輪装甲車(改)にICV型の派生型を加えるべきである。

ただし装輪装甲車(改)の写真を見る限りただでさえ車高が高いのに更に機関砲塔を搭載した場合、完全にトップヘビーな状態になり旋回時の横転の危険性や敵からの被発見性が高くなる事が懸念される。

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35mm機関砲を搭載したAMV35歩兵戦闘車

そもそも国産の装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか

ここまで装輪装甲車(改)について述べてきましたが、そもそも今更国産で装輪装甲車を開発する必要があるのかと筆者は疑問に思う。

世界を見渡せば(まだ配備もされていないが)装輪装甲車(改)よりも防護・火力等の性能面や派生型の豊富さ、そしてコンバットプルーフの点で優れた装輪装甲車は数多あり多額の開発費をかけて中途半端(になりそう)な性能の装輪装甲車(改)を作るよりも海外製の装輪装甲車を購入した方が金銭面でも隊員の生命保護の観点からも良いと私は思うのである。

兵器を開発する為の防衛費は国民の税金により賄われており防衛費も決して無尽蔵では無い事を防衛省自衛隊は自覚しないといけないでしょう。

また兵器の開発にあたってはまず

・なぜその兵器が必要なのか?

・その兵器が必要な場合どの様な兵器にすべきか?

・その兵器を開発したとしてどの様に運用すべきか?

・開発には幾らかかるのか

・どの程度の期間でどの程度調達すべきか?

これらを明確にしておかなければ兵器開発は上手くいきませんし兵器を開発してもその兵器の運用方法や運用思想が無ければ宝の持ち腐れとなってしまいます。そして陸自に限らず防衛省自衛隊は今までこれらの事を明確にせずに「まずは開発してしまえ!運用方法を考えるのはその後だ!」と言わんばかりに兵器を開発し五月雨式に生産するという悪弊がありました。

その結果がどうなっているかは言わずもがなでしょう。最後になりますが最初から国産開発ありきの現在の自衛隊の兵器開発は早急に辞めるべきと私は思います。

*参考サイト及び文献

・防衛装備庁:

http://www.mod.go.jp/atla/index.html

・現代ロテム(K808 8×8装輪装甲車のデータ参考):

https://www.hyundai-rotem.co.kr/Business/Machine/Business_sub.asp?d1=2&d2=1&d3=2

・「世界の最新装輪装甲車カタログ」発行:アリアドネ企画 発売:三修社

・「2016-2017 ROK Military Weapon Systems」発行:DEFENSE TIMES社

(K808 8×8装輪装甲車のデータ参考)

 

 

自衛隊に関するアンケート調査への協力のお願い

いつも当ブログをご覧下さいまして誠にありがとうございます。

自衛隊を取り巻く昨今の情勢の変化に対しまして、自衛隊に関する緊急アンケート調査を行うこととなりました。つきましては当ブログの読者様におかれましては自衛隊に対してのアンケート調査にご協力頂きたく存じます。

アンケートは約2~3分程度で完了いたしますので調査にご協力いただけると幸いです。アンケートを始めるには下記の「安全保障に関するアンケート」をクリックしてください。

安全保障に関するアンケート

なおアンケート結果については後日に公表したいと思います。

【改訂版】自衛隊のPKO・海外派遣時に必要な装備

安保法成立後、その実施を一時凍結されていたPKOでの駆けつけ警護任務の実施に向け政府は自衛隊に対し駆けつけ警護任務の準備を始めるよう命じた。

安保法、運用段階に 自衛隊新任務の訓練着手
隊員の安全確保課題 日本経済新聞

http://www.nikkei.com/my/#!/article/DGKKASFS24H6Z_U6A820C1PP8000/

これから陸上自衛隊では駆けつけ警護任務を想定した訓練を開始する訳だが、しかし自衛隊の現在の装備では駆けつけ警護任務を実施するには必要な装備が無い物があまりにも多すぎて限りなく不可能に近い。今回は自衛隊とりわけ陸自PKOや海外派遣時に必要な装備について書いていこうと思う。

あれも無いこれも不足な個人装備

PKOやその他の海外派遣にあたって陸自に一番必要な物は隊員の個人装備である事は間違いない。特に陸自では隊員の個人装備があまりにも貧弱でこのまま駆けつけ警護任務などにあたらせたら屍累々になるのが目に見えている。そこでこの章では陸自隊員に必要な装備を述べたいと思う。

(1)まず隊員各個人に必要な装備は、夜間警戒時に必要な暗視装置・隊員間で連絡を取るための無線機とヘッドマイク一式・実戦経験のない防弾チョッキ3型に変わる海外製のボディーアーマー・砂漠地帯や高温地域への派遣時にヒートストレス対策にコンバットシャツやクールベスト等・万が一の負傷時対策に米軍と同等規格の個人用携帯メディカルキット

(2)次に隊員に携行させる武器類で必要な装備は、現行の9mm拳銃と89式小銃に変わる海外製の拳銃・アサルトライフル及びそれらに装着する各種光学機器と40mmグレネードランチャー一式・5.56mmのMINIMIではカバーできない範囲への火器として海外製7.62mm機関銃

(3)最後に後方支援として隊員達へ提供した方がいい装備は、活動中の過酷な体力消費の回復として高カロリーエナジーバーやドリンク・現代の若者向けの携行食セット・宿営地での各種温食を提供するための新型野外炊事セット・コンテナ式野戦シャワーセット

ざっとではあるがこのような装備が必要であると思う。特に(1)と(2)の装備は早急に配備すべきで変に国産にこだわらずに、すでに実戦経験のある海外製を緊急輸入して隊員達に配備すべきである。

防護・火力ともに劣る装輪装甲車や車両の更新を!

陸自PKO等で海外派遣される場合、陸自が持って行く96式装輪装甲車や軽装甲機動車高機動車やトラック等のソフトスキン車両では駆けつけ警護時や移動中に敵から攻撃された時にいくら増加装甲や装甲板を装着・補強しているとはいえ防護・火力ともに貧弱な現行の装甲車類やソフトスキン車両では危険である。

海外派遣される部隊は危険な紛争地帯に派遣される場合が多いのだからここでも不毛な国産主義は捨てて隊員の生命確保のために実戦経験のある海外製の装甲車類や装甲トラック等を早急に配備すべきである。

海外派遣時に必要な装甲車のあり方については前にこちらのブログ記事で書いているので読んでいただければと思う。

 

lapd97kai.hatenablog.com

 意外と必要な暴徒鎮圧装備

PKO等で海外派遣される際に陸自隊員に持たせるべき装備で議論になると大抵は個人装備類か武器類の話ばかりになってしまう傾向がある。これはPKOなどの任務の危険上当たり前の事ではあるのだが、その中であまり注目されない装備がある。それは暴徒鎮圧装備である。

自衛隊になぜ暴徒鎮圧装備?と思われる方もおられると思うが、現実のPKOやその他の平和・治安維持活動で派遣される各国軍部隊は事前に母国で暴徒鎮圧装備を実際に使用しての暴徒鎮圧訓練を行っている国がほとんどである。

これはなぜかというとPKOやその他の治安維持活動等で派遣される先は政府軍と反政府軍やゲリラ・テログループとの間で停戦合意が守られていたとしても現地の治安は往々にして悪く、地元住民などが食料や治安・雇用等の問題でフラストレーションが高まりデモから暴動に発展する場合が多い。

そのような場面でもし駆けつけたPKO部隊や治安維持活動部隊がいくら暴動を起こしているとはいえ所持している武器がこん棒レベルの民衆に対して無差別に発砲などしようものならいくら自軍部隊が危険だったとはいえ国際的にPKO部隊が無抵抗の民衆に対して無差別に発砲したとの批判は免れず、また現地住民達のPKO部隊や治安維持活動部隊への憎悪が悪化し結果的に現地での活動が困難もしくは最悪撤退になりかねないのである(92~93年のソマリアでのPKO活動がそれに近い。)。

そのために各国軍では派遣部隊に対して暴徒鎮圧装備を使用した訓練を欠かさず、また最近はこの暴徒鎮圧訓練がますます重要になってきている。ここで実際に海外派遣での暴徒鎮圧を想定した訓練を行っている米海兵隊の動画をご覧いただきたい。ちなみに海外の軍隊ではこの手の訓練を『ライオットコントロール』と呼称して訓練している。


U.S. Marines Riot Control Techniques Training

映像を見てもわかる通り米海兵隊員達が暴徒鎮圧装備を使用していることがお分かりいただけたと思う。では実際にどのような装備が必要なのか下記に簡単ではあるが記したいと思う。

暴徒鎮圧装備:ポリカーボネート製の盾・ヘルメット装着型のフェイスシールド・レッグシールド・バトン(棒)・携行式の催涙スプレー・投擲用の各種催涙弾、閃光弾(フラッシュバン)・催涙弾、ゴム弾を発射するための各種ショットガン、グレネードランチャー(小銃装着型を含む)・一時的に身柄を拘束するためのタイラップ(結束バンド)

以上の装備が基本的な暴徒鎮圧装備である。近年ますます各国軍で重要な訓練と位置付けられている暴徒鎮圧訓練であるが、陸自PKO任務で今後治安維持活動も行うことが予想されるだけにこちらも早急に暴徒鎮圧装備を配備し訓練を開始すべきである。

 

早急に改善すべきPKO派遣の問題点

1992年のカンボジア国PKO派遣から始まった自衛隊PKO(Peace Keeping Operations)活動も今年で24年目を迎える。今現在も、南スーダン他で自衛隊部隊がPKO活動をしている。

特にここ数日で治安が悪化している南スーダンでのPKO活動では現地JICA職員の輸送の為に陸自及び空自の部隊が派遣された。

陸自、邦人退避へ初の陸上輸送 南スーダンでの戦闘受け:朝日新聞デジタル

安倍政権による安保法案の成立・施行により自衛隊に新たに駆けつけ警護が可能になるなどここ1年以内で自衛隊PKO活動への参加のあり方が大きく変わった。

しかし安保法案が成立してもPKO活動に於けるハード・ソフト面での問題が多々残されたままである。今回は主にソフト面(法体系)での問題点について述べたいと思う。

(集団的自衛権国連の活動であるPKOとは関係が無いので今回は説明を省きます。)

PKO協力法『五原則』の大問題

今から24年前、宮沢内閣下(当時)にてPKO協力法が成立した際反対派の抵抗に妥協する形で自衛隊PKO活動に参加するにあたり五つの原則が定められた。所謂PKO五原則である。まずはその『五原則』を簡単にではあるが見てみよう。

①当事者の停戦合意、②当事者の受け入れ同意、③PKOの中立性、

これら三つのうちいずれかが崩れた場合には直ちに引き揚げる

武器の使用は、隊員の生命等防護の為に必要最小限度とすること

以上の五つであるが、前半の①②③は問題無いとして残りの④⑤の二つは絶対に成り立たない。特に④はPKOどころか軍事常識上の大問題である。なぜならば国連PKOは事実上多国籍軍事部隊であり、一度参加したら自国の判断のみで撤収することは不可能である。もし日本のPKO部隊が勝手に撤収すれば現地に残る他国軍PKO部隊に混乱を起こすことが明白である。

折しも南スーダン問題に於いて国連潘基文(パンギムン)事務総長が南スーダンで活動する各国PKO部隊に撤収しないように述べた。

国連事務総長、南スーダン問題で制裁要請 安保理が協議:朝日新聞デジタル

潘氏は「今こそ国連活動を大幅に強化する時だ」と述べ、政府が自国民を保護できなかったり、しなかったりした場合には、国際社会に行動する責任がある、と訴えた。さらにPKOに参加する日本などの貢献国には「一歩も引かないで欲しい。あらゆる後退は、南スーダンと世界に誤ったシグナルを送ることになる」と述べた。 

さらに⑤はPKO派遣地で活動する自衛隊員の安全を無視した物である。PKOで派遣される場合いくら当事者間で停戦合意をしているとはいえ治安は悪く、またいつ停戦合意が破棄されてもおかしくない場合が常識でその中で活動する隊員の武器使用が生命等防護の必要最小限度とするとは正気の沙汰とは思えない物である。これはROE(Rules of Engagement)の項で詳しく述べるが、政府は早急にPKO五原則の④⑤を廃止する必要性がある。

ROEとは何か?

PKOで活動する各国軍部隊はそれぞれROEとSOPを定めている。またPKOに参加する各国軍部隊は国連が定めたROEに沿って自国軍部隊のROEを策定している。ではROE・SOPとは何なのかそれぞれ個別に解説していこう。

まず上記でも述べたROEからであるがROEとは「Rules of Engagement」の略で交戦規定(自衛隊では部隊行動基準と呼ぶ)の事を指す。交戦規定とはいつ・誰が・どこで・どのような状況で攻撃を受けた又は受ける恐れのある場合に誰の指揮により・どの時点で・どの程度の反撃もしくは攻撃を許すかについて詳細に明記された物でありどこの軍隊でも規定されている。この規定に沿って現場の指揮官・兵士は武器を使用する。

大抵の国の軍隊ではROEにあまり縛りをかけておらず現場の状況に応じて柔軟に対応できるように規定されている。翻って日本の自衛隊ROEは発足当初からお寒い限りであった。今でこそ多少マシになった(それでも他国軍よりはるかに劣るが)自衛隊ROEであるが、PKO協力法成立時のROEは無きに等しくさらに武器の使用も個人の判断に任せるという最早ROEと呼ぶのもバカバカしい有様であった(98年のPKO協力法の改正により現場に上官がいる場合、原則としてその命令によらなければならないとされた経緯がある)。

ちなみに他国のROEでは必ず現場の上官の指揮下により武器を使用することが可能とされており、兵士個人の判断に委ねるなどとはしていない。日本政府及び防衛省は他国軍と同等のROEを早急に策定すべきである。

あまり知られていないSOP

さてROEの次はSOPについて述べていこう。SOPとは「Standing Operating Procedure」の略で作戦規定の事を指す。作戦規定とはPKO多国籍軍に自国軍部隊を派遣する際にどのように部隊運用するか・他国軍との共同作戦時の部隊・兵站運用さらにはどのような装備を使用するかという事が事細かく決められている規定の事である。

あまり知られていないがPKO活動や多国籍軍へ自国軍部隊を派遣した場合、現場ではROEはそれぞれ国連多国籍軍によって定められた物に準じて定めている。理由は各国軍でバラバラのROEを使用していては統一した攻撃が出来なくなるからである。

一方、SOPの方はPKOにしろ多国籍軍への派遣にしろ自国の判断で決定することが出来る。例えて言うとある内紛が起きた某国に複数の国の部隊がPKO派遣されたとしてA国は現地の脅威度が高いと判断し戦車を持ってきた、一方B国は現地の脅威度はそれほど高くないと判断しAPC程度の装備を持ち込んだ。この場合、A国は自国のSOPに則り戦車を派遣しまたB国も同様に自国のSOPに則り戦車まで派遣する必要はないと判断したのである。

特にPKO活動の場合、派遣される各国軍で持ち込む兵器が違うのはSOP上当たり前のことであり他国軍のために自国軍の持ち込む装備を変える必要はSOP上無いのである。さらに各国軍のSOPでは現地の脅威度に応じて柔軟に持ち込む兵器を変えている。これは派遣される兵士の命を守るために必要だからである。

そして我らが自衛隊のSOPはどうなっているかというと、一応自衛隊もSOPを定めてはいるがROE同様不都合な部分が多く特にPKO活動等で派遣される際に持ち込む兵器について過重な縛りがかけられており、例え戦車やIFV等が必要な場合でも時の政治的判断により必要最小限の装備しか持たせてもらえないのが現状である(イラク派遣時が記憶に新しいか)。

PKO活動にしろ多国籍軍での活動にしろ日本が戦車を持ってこようがIFVを持ってこようが国連・他国軍は気にしない。なぜなら日本は自国のSOPに沿って派遣したのだとしか思わないからである。どの国も「日本は他国に武力行使している!」などとは言わないのである。まあ日本が戦車を300両も持ち込むとかICBMを持って行くのならば他国が「日本は何しに来たんだ?」と警戒するだろうが・・・

SOPについても政府・防衛省は現地に派遣する自衛隊の兵器について『政治的介入』を止め自衛隊側が持ち込む兵器を自身で決定できるようにすべきである。派遣される自衛隊員の生命を守るためならなおさら必要な事である。

 

 

 

【訂正】ツイッター再開しました

皆様明けましておめでとうございます。

えー、もの凄く遅い新年の挨拶を致しましたが、昨年から一度も記事を更新せず
大変に失礼致しました(汗)
 
なにぶん最近は記事を書くモチベーションがダダ下がり状態という駄目人間状態だったもので…
まあ言い訳にしか過ぎないのでこれ以上は何も言うまい(泣)
 
という訳でこれからは書きたい事を少しずつ書いていこうと思いますので、興味のある方は生暖かい目で見てやってくださいませ。
 
そして一度止めていたツイッターの方をまた再開しました。
前回はツイッター上で色々やり過ぎたので(苦笑)今回のはマッタリしながら呟くつもりです。
ツイッターの方にも興味のある方は気軽にフォローしてみてください。
ツイッターはこちら:

https://twitter.com/p2themovie (通常版に訂正しました。)

韓国軍新兵器時報 新MLRS「天舞」

韓国陸軍が現在保有している「九龍」多連装ロケット砲の後続MLRSとして開発した韓国国産の新型MLRS(多連装ロケットシステム)の「天舞(チュンム)」が続々と実戦配備され始めている。今回はこの韓国陸軍新型MLRS「天舞」について簡単ではあるが解説をしていきたいと思う。

旧式化した「九龍」多連装ロケット砲を更新せよ

韓国陸軍は現在2種類のMLRS(多連装ロケットシステム以下MLRSと表記)を保有している。一つ目は米国製のMLRS(Multiple Launch Rocket System)を韓国にてライセンス生産したもので、もう一つが韓国国産のMLRS「九龍」シリーズである。

この韓国製MLRS「九龍」シリーズは北朝鮮の多連装ロケット砲群に対抗するために韓国の斗山DST社が1981年に開発した無誘導130mmMLRSである。配備された当初は射程が23kmと短く、DMZの奥深くより発射される北朝鮮の多連装ロケット砲群に対抗するには射程不足とされのちに130mm無誘導ロケット弾を131mm無誘導弾に変更し、射程も36kmまで延伸する改良が施された「九龍2」が開発された。

しかし開発から30年以上が経過し旧式化した事と後続のMLRSとして導入した米国製MLRSの導入が思うように進まない現状に業を煮やした韓国陸軍は2000年代から次期国産MLRSの開発を決定した。それが「天舞(チュンム)」MLRSである。

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演習中の「九龍」多連装ロケット砲

GPS誘導可能なロケット弾を搭載する「天舞」MLRS

韓国国産の次期MLRS「天舞(チュンム)」の開発は「九龍」シリーズを開発した斗山DST社と次期MLRSに新たに装備されたGPS/IMUによる誘導ロケット弾システムを開発した韓国兵器メーカーのHanwha社の二社合同で開発された。

車体・ロケット弾発射器を斗山DST社が担当し、ロケット弾システムをHanwha社が担当して開発された。

この新型MLRS「天舞(チュンム)」は斗山DST社が開発した8×8ベースの車体に米国製MLRSの発車器を搭載した形をしており、発車器は片側6発ずつロケット弾の搭載を基本とし発射するロケット弾は無誘導130mm・227mmロケット弾とGPS/IMU誘導の230mmロケット弾の三種類が用意されている。

ちなみにそれぞれの最大搭載数は130mm無誘導ロケット弾40発・227mm無誘導及び230mmGPS/IMU誘導ロケット弾がそれぞれ12発ずつ搭載することが可能である。

ちなみに射程は230mmGPS/IMU誘導ロケット弾で80kmの射程とされている。また韓国陸軍での「天舞(チュンム)」の正式名称はK-239MLRSである。

www.youtube.com

上の動画は「天舞(チュンム)」MLRSによる実弾発射訓練時の物である。

 

 

陸自は輸送防護車を邦人輸送で使いこなせるのか?

朝日新聞の記事によると、自衛隊が海外で内乱等が発生した際に邦人救出・輸送の際に邦人を輸送する為の「輸送防護車」を報道陣に公開した。

耐爆仕様の「輸送防護車」で邦人輸送訓練 自衛隊が公開:朝日新聞デジタル

陸自が購入したこの輸送防護車はオーストラリア製のブッシュマスター装輪装甲車で、中央即応連隊に4両が配備された。

しかし今回陸自が邦人輸送の為に購入したブッシュマスター装輪装甲車の公開写真を見る限り果たして有事の際に陸自はこの輸送防護車を上手く運用できるのかと疑問が沸く。そこで今回は陸自が配備した輸送防護車の懸念について書こうと思う。

 

陸自が導入した輸送防護車とは?

今回陸自が配備した輸送防護車は上記の通り、オーストラリア製のブッシュマスター装輪装甲車を購入した物である。このブッシュマスター装輪装甲車はオーストラリア軍がアフガニスタンの戦訓から製造した対IED防護力に強く、また長距離移動時の歩兵の負担軽減の為に車内容積が広くかつ車高が高い装甲車である。

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オーストラリア国産のブッシュマスター装輪装甲車

このブッシュマスター装輪装甲車は増加装甲を装着しない標準時で全周7.62mm徹甲弾に耐え、状況により増加装甲も装着することが可能である。しかし幾ら増加装甲を装着したとしてRPG等の対戦車兵器の攻撃を受けたら耐えられないであろう。

 

陸自の輸送防護車に足りない物その1

ブッシュマスター装輪装甲車については以上であるが、では“陸自バージョン”のブッシュマスター装輪装甲車こと輸送防護車は邦人救出・輸送の際に有用かと言うと筆者としては疑問である。

まず報道陣に公開された輸送防護車の写真を見る限り対RPG用の為のスラットアーマー等の防護がなされていない。通常、内乱等が発生した紛争地では反政府軍やテロ集団がRPG等の対戦車兵器程度は保有していると想定するのが常識である。シリアで政府軍と戦闘しているIS(イスラム国)ですらTOW対戦車ミサイルでシリア政府軍の戦車等を攻撃している現状を見ればなおさら対戦車兵器対策をすべきである。

しかし陸自が報道陣に公開した邦人輸送訓練の写真を見ても輸送防護車は標準タイプのままである。これでは実際に紛争地に邦人輸送の為に派遣された際に敵からRPGの攻撃でも受ければ乗車している邦人はひとたまりもなく危険であると言いたい。陸自は早急に輸送防護車にスラットアーマー等の防護をすべきである。

 

陸自の輸送防護車に足りない物その2

その1では輸送防護車の防護力の問題について述べたが、その2では輸送防護車の自衛火器の問題について述べる。

まずもともとのブッシュマスター装輪装甲車を開発・運用しているオーストラリア軍では操縦席のルーフ上に遠隔操作式のM2 12.7mm重機関銃RWS(リモコン・ウェポン・ステーション)を標準装備している。

これはアフガニスタンの戦訓から敵から狙われやすいルーフ上の射手を守るために行われている措置である。またRWSでは無く射手による人力での警戒の場合は全周を小火器弾から射手を守る為に防盾をハッチに取り付けている。

しかし今回陸自が導入した輸送防護車の写真を見ると主に二つの問題がある。まず1つ目は輸送防護車に取り付けられている火器がMINIMIである点である。MINIMIは5.56mmの分隊支援火器であり、敵から7.62mmや12.7mm機関銃での攻撃を受けた際の応戦火器としては威力・射程ともにMINIMIでは敵から劣り、まともな反撃も出来ず僚車どころか自車すら守れるのかも危うくこれまた乗車している邦人や自衛官は大変危険な状況になる可能性が非常に高い。輸送防護車の搭載火器は12.7mm重機関銃に変更すべきである。

また輸送防護車のルーフ上には射手を守る為の防盾すら取り付けられておらず、射手がむき出しのままであり、これでは狙って撃ってくださいと自ら言っている様なものであり果たして陸自の上層部は現場の自衛官の生命保護を真剣に考えているのかと言われても仕方がない状況である。

輸送防護車の車列を警備する軽装甲機動車や96式装輪装甲車には防盾を装備しているのだから今すぐに輸送防護車にも全周式の防盾を装備すべきである。

それよりも陸自はブッシュマスター装輪装甲車を導入する際に海外製のRWSも同時に購入すべきであった。まさか陸自が海外製のRWSを購入しなかったのは国産のRWSの開発が済むまで待つつもりだとしたら自衛官の人命軽視も甚だしいと言わざるをえない。RWS程度なら実戦経験もあり品質も良い海外製の購入で十分である。

 

そもそもブッシュマスター装輪装甲車は邦人輸送に適しているか?

ここまで陸自が導入した輸送防護車の問題点について述べてきたが、最後に果たして邦人輸送にブッシュマスター装輪装甲車を選定したのは最適だったのかについて考えたいと思う。

まず陸自が描く邦人輸送の方法であるが、救出・輸送する邦人を今回導入した輸送防護車に乗車させその車列を軽装甲機動車と96式装輪装甲車で警護するという計画である。

だがしかし、内乱やテロ等の発生している紛争地で邦人を乗せた車列を警護するのが(いくら増加装甲を装着しているとはいえ)軽装甲機動車と96式装輪装甲車レベルではまともな警護ができるのか火力・防護力の観点から見て甚だ疑問である。また仮に機動戦闘車も持って行くとしても軽装甲機動車と96式装輪装甲車がお荷物になる可能性が高いと言えよう。

ここで私が思うことは、そもそも邦人輸送やPKO任務等で海外に派遣される中央即応連隊やその他派遣部隊用にいっその事軽装甲機動車・96式装輪装甲車・輸送防護車全ての車種を統一するために海外製の装輪装甲車を導入・配備した方がいいのではと考える。

どうせ海外派遣向けなのだから実績のある海外製装輪装甲車の方が実際に派遣される隊員達も安心して任務に専念する事が出来るであろう。

購入するのであれば、昨今の装輪装甲車の能力としては当たり前のIED対策・対RPG用のスラットアーマー・増加装甲の装着が可能でRWSを標準装備としている海外製装輪装甲車を購入すれば良いのではないであろうか。

購入車種としてはまず防護力の高いフィンランド製のAMV装輪装甲車のAPCタイプと30mm機関砲塔を備えたICVタイプの2車種を購入するプランである。特に30mm機関砲塔を備えるICVタイプは車列警護時の火力としては妥当な所であると思う。

また購入費用を抑えるのであれば実戦経験豊富なフランス製のVAB装輪装甲車が低コストで汎用性が高い車種であるために良いのではないであろうか?VAB装輪装甲車も増加装甲やスラットアーマー等を装着出来る上にカスタマーの要望に応じてバリュエーション変更にも応じてくれる所がメリットであると考える。

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写真は上からAMV装輪装甲車・VAB装輪装甲車

陸自の装輪装甲車の問題についていつか纏めて書こうと思います。