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97式改LAPDblog

パトレイバー好きなおっさんが、軍事や思った事を徒然書く日記です 旧ブログ(FC2ブログ)から引っ越して来ました

陸自AH-1S後続機問題に見る陸自の問題点

陸自の対戦車ヘリAH-1Sの老朽化が進んでいるのに後続機導入の具体的な動きを陸自からなんら聞かない。いや正確にいうと数年前に一度AH-1Sの後続機として米国製攻撃ヘリのAH-64D アパッチ・ロングボウを導入したが諸問題により結局AH-64Dの導入機数は13機で中止された過去がある。ここではその時の話は省くがそれ以降AH-1Sの後続機についての動きが無いというのが現在の状況である。

しかし陸自へのAH-1Sの初納入から既に30年以上経過しており機体の老朽化が激しく、約60機保有しているAH-1Sの戦力的陳腐化を免れる事が出来ずにいるという問題に直面している。そこで今回は老朽化の進むAH-1Sの対応策の検討と問題点を、そして最後にAH-1S後続機問題から読み取れる陸自の問題点について書きたいと思います。

陸自はどの様な対応策を選ぶのか?

老朽化の進むAH-1Sの戦力的陳腐化を防ぐ手立てとして主に考えられるのは以下の通りである

1.AH-1Sの機齢延命化と近代化改修

2.新規に外国製攻撃ヘリの導入

3.国産攻撃ヘリの新規開発

以上の通りであるのだが、しかしそれぞれの対応策には避けられない問題点が存在する。それでは各対応策について検討をしていくことにする。

機齢延命化と近代化改修では乗り切れない

まず最初に現在保有しているAH-1Sに機齢延命化と近代化改修を施す対応策について見ていこう。上でも書いたが陸自AH-1Sの機体年齢は古く(幾度かの小規模な近代化改修をしているが)導入時からあまり大規模な近代化改修が行われていない。

そこで既存のAH-1Sの機齢延命化と近代化改修措置をするという手がある。機齢延命化とは字のごとく機体のエンジンや配線等々を丸ごと刷新し、機体の耐用年数を伸ばす作業の事であり近代化改修とは機体部品や装備を新規の別な物に変更する事である。

AH-1Sは既に30年以上使用され老朽化が激しいが機齢延命化作業により今後10年程度は問題なく使用できるであろう。また近代化改修策としては改修費用を抑える意味で改修部分をターゲティングシステムのTSS(target sight system)を新型に変更し、FCSの改修に合わせて搭載兵器のTOW対戦車ミサイルヘルファイア対戦車ミサイルに更新とコックピットのデジタル化といった所であろうか。この改修によりAH-1Sの攻撃力のある程度の向上は見込めるであろう。

以上の通り、AH-1Sの機齢延命化と近代化改修策について検討してみたが現実的に言ってこの対応策を陸自が選ぶ事は無いと言える。理由は以上の措置をしてまでAH-1Sを使い続けるのが得策なのかという費用対効果と、どのみち後続機の導入は避けられないのであれば新規に攻撃ヘリを導入した方が結果的に安価であるためである。

陸自の本命はAH-64Eであろう

さて次に新規に外国製攻撃ヘリの導入案だが最初に結論を書いてしまうと、陸自の本音としてはAH-1Sの後続機には米国製AH-64シリーズの最新機のAH-64E アパッチ・ガーディアンが欲しいのが本音であろう。

陸自は(どの分野でもだが)とかく新型の兵器を欲しがる悪弊がある。しかも攻撃ヘリでは米国製(米陸軍が使用している)のAH-64を欲しがるのはAH-64Dの導入時の時などからも読み取ることが出来る。しかも導入単価が高いとくるから尚更たちが悪いのである。

陸自の悪弊については後述するとして、しかしAH-1Sの後続機をまともに検討するならばAH-64Eに落ち着くのが妥当であろう。AH-64EをAH-1Sの後続機として導入すれば対戦車攻撃力の大幅な向上が見込めAH-64Eのデータリンク能力やエンジンが単発機から双発機になることで洋上飛行での安定性も見込め離島防衛時にDDHからの離発着をしての作戦が出来たりと作戦活動の幅が広くなる事が見込めるであろう。

新規国産AH-X開発はまず無い

さて最後は国産での新規攻撃ヘリの開発案であるが、まず無いと言える。ネット上などで偵察ヘリのOH-1を攻撃ヘリ仕様のAOH-1にするべきだなどと相変わらず国産AH-X開発の夢を見る人が多い。しかしどう考えても開発に多額の費用と時間を浪費し、完成したとしても陸自の国産兵器特有の単価の高さと相まって調達数が少数になるのが目に見えている国産AH-Xを新規に開発するという案はAH-1S後続機として全く考えられないし、陸自攻撃ヘリ国産化という考えは(願望はあれど)無いであろう。

また安倍政権による武器輸出解禁で日本製AH-Xが売れれば単価が下がると言う人達もいるがそれも無いと言っても過言ではない。いくら国産のAH-Xの売り込みを図った所で海外には日本製よりも安価で性能の良い攻撃ヘリを販売している国は多数あるし、攻撃ヘリを買う体力の無い国は中古のAH-1やら軽攻撃ヘリを買う。つまり勢い勇んで売りに行っても全く売れないのが関の山であろう。

一番の問題は陸自攻撃ヘリの運用思想

ここまでAH-1S後続機の対応策を述べてみたが最後に一番の問題点がある。それは陸自AH-1Sの後続機導入にあたって事前の新AH-Xの明確な運用方針の欠如である。

これはAH-64D導入の際もそうであった。陸自側はAH-64D導入前にAH-64Dのデータリンク能力を殊更強調し、当時開発中であったTK-X(後の10式戦車)や普通科部隊などとAH-64Dをデータリンク能力を駆使して国内に侵入したゲリラ・コマンドウ部隊(通称:対ゲリコマ作戦)の撃退に有用と喧伝した。しかしいざAH-64Dが導入されてみると導入したはいいが肝心の陸自部隊でのデータリンクシステムの普及が進んでおらず折角のAH-64Dのデータリンク能力が活用出来ず結局陸自はAH-64Dを手持ちぶたさにしてしまったのである。

その後の顛末は誰もが知る通りである。この様な状態を産んだ原因は陸自側にAH-64Dを導入するにあたり事前の明確な運用方針が確立されていなかった為である。

攻撃ヘリに限らずどの兵器の導入時にも言える事だが、導入にあたってなぜその兵器が必要なのか・どの様な状況で運用するのか・そのような状況で運用するにはどのような運用方法が必要なのかを充分に検討した結果の上で導入しなければまともな戦力的運用は望めないのである。

そして陸自には上記の様な明確な運用方針の策定や運用方法を決めずに「とりあえず導入してしまえ考えるのはその後だ」と兵器調達をする悪弊が昔から続いているのが実情である。陸自がもしAH-1Sの後続機を導入するならば導入前に明確な運用方針を策定し国民にそれを公表するのが大前提であると私は考える。国防は確かに大事ではあるが兵器を購入するお金は国民の税金であり、国費にも限度がある事を陸自のみならず防衛省自衛隊は心得ておく必要があるはずであろう。