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97式改LAPDblog

パトレイバー好きなおっさんが、軍事や思った事を徒然書く日記です 旧ブログ(FC2ブログ)から引っ越して来ました

陸自は輸送防護車を邦人輸送で使いこなせるのか?

朝日新聞の記事によると、自衛隊が海外で内乱等が発生した際に邦人救出・輸送の際に邦人を輸送する為の「輸送防護車」を報道陣に公開した。

耐爆仕様の「輸送防護車」で邦人輸送訓練 自衛隊が公開:朝日新聞デジタル

陸自が購入したこの輸送防護車はオーストラリア製のブッシュマスター装輪装甲車で、中央即応連隊に4両が配備された。

しかし今回陸自が邦人輸送の為に購入したブッシュマスター装輪装甲車の公開写真を見る限り果たして有事の際に陸自はこの輸送防護車を上手く運用できるのかと疑問が沸く。そこで今回は陸自が配備した輸送防護車の懸念について書こうと思う。

 

陸自が導入した輸送防護車とは?

今回陸自が配備した輸送防護車は上記の通り、オーストラリア製のブッシュマスター装輪装甲車を購入した物である。このブッシュマスター装輪装甲車はオーストラリア軍がアフガニスタンの戦訓から製造した対IED防護力に強く、また長距離移動時の歩兵の負担軽減の為に車内容積が広くかつ車高が高い装甲車である。

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オーストラリア国産のブッシュマスター装輪装甲車

このブッシュマスター装輪装甲車は増加装甲を装着しない標準時で全周7.62mm徹甲弾に耐え、状況により増加装甲も装着することが可能である。しかし幾ら増加装甲を装着したとしてRPG等の対戦車兵器の攻撃を受けたら耐えられないであろう。

 

陸自の輸送防護車に足りない物その1

ブッシュマスター装輪装甲車については以上であるが、では“陸自バージョン”のブッシュマスター装輪装甲車こと輸送防護車は邦人救出・輸送の際に有用かと言うと筆者としては疑問である。

まず報道陣に公開された輸送防護車の写真を見る限り対RPG用の為のスラットアーマー等の防護がなされていない。通常、内乱等が発生した紛争地では反政府軍やテロ集団がRPG等の対戦車兵器程度は保有していると想定するのが常識である。シリアで政府軍と戦闘しているIS(イスラム国)ですらTOW対戦車ミサイルでシリア政府軍の戦車等を攻撃している現状を見ればなおさら対戦車兵器対策をすべきである。

しかし陸自が報道陣に公開した邦人輸送訓練の写真を見ても輸送防護車は標準タイプのままである。これでは実際に紛争地に邦人輸送の為に派遣された際に敵からRPGの攻撃でも受ければ乗車している邦人はひとたまりもなく危険であると言いたい。陸自は早急に輸送防護車にスラットアーマー等の防護をすべきである。

 

陸自の輸送防護車に足りない物その2

その1では輸送防護車の防護力の問題について述べたが、その2では輸送防護車の自衛火器の問題について述べる。

まずもともとのブッシュマスター装輪装甲車を開発・運用しているオーストラリア軍では操縦席のルーフ上に遠隔操作式のM2 12.7mm重機関銃RWS(リモコン・ウェポン・ステーション)を標準装備している。

これはアフガニスタンの戦訓から敵から狙われやすいルーフ上の射手を守るために行われている措置である。またRWSでは無く射手による人力での警戒の場合は全周を小火器弾から射手を守る為に防盾をハッチに取り付けている。

しかし今回陸自が導入した輸送防護車の写真を見ると主に二つの問題がある。まず1つ目は輸送防護車に取り付けられている火器がMINIMIである点である。MINIMIは5.56mmの分隊支援火器であり、敵から7.62mmや12.7mm機関銃での攻撃を受けた際の応戦火器としては威力・射程ともにMINIMIでは敵から劣り、まともな反撃も出来ず僚車どころか自車すら守れるのかも危うくこれまた乗車している邦人や自衛官は大変危険な状況になる可能性が非常に高い。輸送防護車の搭載火器は12.7mm重機関銃に変更すべきである。

また輸送防護車のルーフ上には射手を守る為の防盾すら取り付けられておらず、射手がむき出しのままであり、これでは狙って撃ってくださいと自ら言っている様なものであり果たして陸自の上層部は現場の自衛官の生命保護を真剣に考えているのかと言われても仕方がない状況である。

輸送防護車の車列を警備する軽装甲機動車や96式装輪装甲車には防盾を装備しているのだから今すぐに輸送防護車にも全周式の防盾を装備すべきである。

それよりも陸自はブッシュマスター装輪装甲車を導入する際に海外製のRWSも同時に購入すべきであった。まさか陸自が海外製のRWSを購入しなかったのは国産のRWSの開発が済むまで待つつもりだとしたら自衛官の人命軽視も甚だしいと言わざるをえない。RWS程度なら実戦経験もあり品質も良い海外製の購入で十分である。

 

そもそもブッシュマスター装輪装甲車は邦人輸送に適しているか?

ここまで陸自が導入した輸送防護車の問題点について述べてきたが、最後に果たして邦人輸送にブッシュマスター装輪装甲車を選定したのは最適だったのかについて考えたいと思う。

まず陸自が描く邦人輸送の方法であるが、救出・輸送する邦人を今回導入した輸送防護車に乗車させその車列を軽装甲機動車と96式装輪装甲車で警護するという計画である。

だがしかし、内乱やテロ等の発生している紛争地で邦人を乗せた車列を警護するのが(いくら増加装甲を装着しているとはいえ)軽装甲機動車と96式装輪装甲車レベルではまともな警護ができるのか火力・防護力の観点から見て甚だ疑問である。また仮に機動戦闘車も持って行くとしても軽装甲機動車と96式装輪装甲車がお荷物になる可能性が高いと言えよう。

ここで私が思うことは、そもそも邦人輸送やPKO任務等で海外に派遣される中央即応連隊やその他派遣部隊用にいっその事軽装甲機動車・96式装輪装甲車・輸送防護車全ての車種を統一するために海外製の装輪装甲車を導入・配備した方がいいのではと考える。

どうせ海外派遣向けなのだから実績のある海外製装輪装甲車の方が実際に派遣される隊員達も安心して任務に専念する事が出来るであろう。

購入するのであれば、昨今の装輪装甲車の能力としては当たり前のIED対策・対RPG用のスラットアーマー・増加装甲の装着が可能でRWSを標準装備としている海外製装輪装甲車を購入すれば良いのではないであろうか。

購入車種としてはまず防護力の高いフィンランド製のAMV装輪装甲車のAPCタイプと30mm機関砲塔を備えたICVタイプの2車種を購入するプランである。特に30mm機関砲塔を備えるICVタイプは車列警護時の火力としては妥当な所であると思う。

また購入費用を抑えるのであれば実戦経験豊富なフランス製のVAB装輪装甲車が低コストで汎用性が高い車種であるために良いのではないであろうか?VAB装輪装甲車も増加装甲やスラットアーマー等を装着出来る上にカスタマーの要望に応じてバリュエーション変更にも応じてくれる所がメリットであると考える。

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写真は上からAMV装輪装甲車・VAB装輪装甲車

陸自の装輪装甲車の問題についていつか纏めて書こうと思います。