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97式改LAPDblog

パトレイバー好きなおっさんが、軍事や思った事を徒然書く日記です 旧ブログ(FC2ブログ)から引っ越して来ました

早急に改善すべきPKO派遣の問題点

1992年のカンボジア国PKO派遣から始まった自衛隊PKO(Peace Keeping Operations)活動も今年で24年目を迎える。今現在も、南スーダン他で自衛隊部隊がPKO活動をしている。

特にここ数日で治安が悪化している南スーダンでのPKO活動では現地JICA職員の輸送の為に陸自及び空自の部隊が派遣された。

陸自、邦人退避へ初の陸上輸送 南スーダンでの戦闘受け:朝日新聞デジタル

安倍政権による安保法案の成立・施行により自衛隊に新たに駆けつけ警護が可能になるなどここ1年以内で自衛隊PKO活動への参加のあり方が大きく変わった。

しかし安保法案が成立してもPKO活動に於けるハード・ソフト面での問題が多々残されたままである。今回は主にソフト面(法体系)での問題点について述べたいと思う。

(集団的自衛権国連の活動であるPKOとは関係が無いので今回は説明を省きます。)

PKO協力法『五原則』の大問題

今から24年前、宮沢内閣下(当時)にてPKO協力法が成立した際反対派の抵抗に妥協する形で自衛隊PKO活動に参加するにあたり五つの原則が定められた。所謂PKO五原則である。まずはその『五原則』を簡単にではあるが見てみよう。

①当事者の停戦合意、②当事者の受け入れ同意、③PKOの中立性、

これら三つのうちいずれかが崩れた場合には直ちに引き揚げる

武器の使用は、隊員の生命等防護の為に必要最小限度とすること

以上の五つであるが、前半の①②③は問題無いとして残りの④⑤の二つは絶対に成り立たない。特に④はPKOどころか軍事常識上の大問題である。なぜならば国連PKOは事実上多国籍軍事部隊であり、一度参加したら自国の判断のみで撤収することは不可能である。もし日本のPKO部隊が勝手に撤収すれば現地に残る他国軍PKO部隊に混乱を起こすことが明白である。

折しも南スーダン問題に於いて国連潘基文(パンギムン)事務総長が南スーダンで活動する各国PKO部隊に撤収しないように述べた。

国連事務総長、南スーダン問題で制裁要請 安保理が協議:朝日新聞デジタル

潘氏は「今こそ国連活動を大幅に強化する時だ」と述べ、政府が自国民を保護できなかったり、しなかったりした場合には、国際社会に行動する責任がある、と訴えた。さらにPKOに参加する日本などの貢献国には「一歩も引かないで欲しい。あらゆる後退は、南スーダンと世界に誤ったシグナルを送ることになる」と述べた。 

さらに⑤はPKO派遣地で活動する自衛隊員の安全を無視した物である。PKOで派遣される場合いくら当事者間で停戦合意をしているとはいえ治安は悪く、またいつ停戦合意が破棄されてもおかしくない場合が常識でその中で活動する隊員の武器使用が生命等防護の必要最小限度とするとは正気の沙汰とは思えない物である。これはROE(Rules of Engagement)の項で詳しく述べるが、政府は早急にPKO五原則の④⑤を廃止する必要性がある。

ROEとは何か?

PKOで活動する各国軍部隊はそれぞれROEとSOPを定めている。またPKOに参加する各国軍部隊は国連が定めたROEに沿って自国軍部隊のROEを策定している。ではROE・SOPとは何なのかそれぞれ個別に解説していこう。

まず上記でも述べたROEからであるがROEとは「Rules of Engagement」の略で交戦規定(自衛隊では部隊行動基準と呼ぶ)の事を指す。交戦規定とはいつ・誰が・どこで・どのような状況で攻撃を受けた又は受ける恐れのある場合に誰の指揮により・どの時点で・どの程度の反撃もしくは攻撃を許すかについて詳細に明記された物でありどこの軍隊でも規定されている。この規定に沿って現場の指揮官・兵士は武器を使用する。

大抵の国の軍隊ではROEにあまり縛りをかけておらず現場の状況に応じて柔軟に対応できるように規定されている。翻って日本の自衛隊ROEは発足当初からお寒い限りであった。今でこそ多少マシになった(それでも他国軍よりはるかに劣るが)自衛隊ROEであるが、PKO協力法成立時のROEは無きに等しくさらに武器の使用も個人の判断に任せるという最早ROEと呼ぶのもバカバカしい有様であった(98年のPKO協力法の改正により現場に上官がいる場合、原則としてその命令によらなければならないとされた経緯がある)。

ちなみに他国のROEでは必ず現場の上官の指揮下により武器を使用することが可能とされており、兵士個人の判断に委ねるなどとはしていない。日本政府及び防衛省は他国軍と同等のROEを早急に策定すべきである。

あまり知られていないSOP

さてROEの次はSOPについて述べていこう。SOPとは「Standing Operating Procedure」の略で作戦規定の事を指す。作戦規定とはPKO多国籍軍に自国軍部隊を派遣する際にどのように部隊運用するか・他国軍との共同作戦時の部隊・兵站運用さらにはどのような装備を使用するかという事が事細かく決められている規定の事である。

あまり知られていないがPKO活動や多国籍軍へ自国軍部隊を派遣した場合、現場ではROEはそれぞれ国連多国籍軍によって定められた物に準じて定めている。理由は各国軍でバラバラのROEを使用していては統一した攻撃が出来なくなるからである。

一方、SOPの方はPKOにしろ多国籍軍への派遣にしろ自国の判断で決定することが出来る。例えて言うとある内紛が起きた某国に複数の国の部隊がPKO派遣されたとしてA国は現地の脅威度が高いと判断し戦車を持ってきた、一方B国は現地の脅威度はそれほど高くないと判断しAPC程度の装備を持ち込んだ。この場合、A国は自国のSOPに則り戦車を派遣しまたB国も同様に自国のSOPに則り戦車まで派遣する必要はないと判断したのである。

特にPKO活動の場合、派遣される各国軍で持ち込む兵器が違うのはSOP上当たり前のことであり他国軍のために自国軍の持ち込む装備を変える必要はSOP上無いのである。さらに各国軍のSOPでは現地の脅威度に応じて柔軟に持ち込む兵器を変えている。これは派遣される兵士の命を守るために必要だからである。

そして我らが自衛隊のSOPはどうなっているかというと、一応自衛隊もSOPを定めてはいるがROE同様不都合な部分が多く特にPKO活動等で派遣される際に持ち込む兵器について過重な縛りがかけられており、例え戦車やIFV等が必要な場合でも時の政治的判断により必要最小限の装備しか持たせてもらえないのが現状である(イラク派遣時が記憶に新しいか)。

PKO活動にしろ多国籍軍での活動にしろ日本が戦車を持ってこようがIFVを持ってこようが国連・他国軍は気にしない。なぜなら日本は自国のSOPに沿って派遣したのだとしか思わないからである。どの国も「日本は他国に武力行使している!」などとは言わないのである。まあ日本が戦車を300両も持ち込むとかICBMを持って行くのならば他国が「日本は何しに来たんだ?」と警戒するだろうが・・・

SOPについても政府・防衛省は現地に派遣する自衛隊の兵器について『政治的介入』を止め自衛隊側が持ち込む兵器を自身で決定できるようにすべきである。派遣される自衛隊員の生命を守るためならなおさら必要な事である。