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97式改LAPDblog

パトレイバー好きなおっさんが、軍事や思った事を徒然書く日記です 旧ブログ(FC2ブログ)から引っ越して来ました

【改訂版】装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか?

さる平成29年1月10日、防衛装備庁のサイトにて96式装輪装甲車の後継として試作中だった装輪装甲車(改)の試作品が納入されたと発表された。

防衛装備庁 : 試作品

サイトでは装輪装甲車(改)の試験動画や写真を見ることができ、既にネット上ではこの装輪装甲車(改)についての考察や批評が行われている。

今回の記事は装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか?という点について装輪装甲車(改)の簡単な紹介をしながら不安な点や海外製装輪装甲車と比較しながら述べたいと思う。

車両制限令による制限の為の限界

さて先ずは防衛装備庁のサイトにて公表された装輪装甲車(改)の主要諸元について見てみよう。

 

 装輪装甲車(改)主要諸元

 

全長×全幅×全高 約8.4m×約2.5m×約2.9m
乗員定数 11人
重量 約20t

 

車体の全長が8.4mと長く全幅が2.5mと幅が狭いのに対して全高が2.9mとかなりトップヘビーな車体に思えてしまう。さらに公開された装輪装甲車(改)の写真も見てみよう。

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車体側面はほぼ垂直で重心が高いのが見て取れる。なぜこの様な車体になってしまったかというと答えは道路法の車両制限令にある。この車両制限令では日本国内を走行する車両の幅が最大2.5mまでと決められている。

そしてなぜか自衛隊の車両もこの車両制限令を守らなければならず車幅が2.5mまでしか許可されないという長年のお役所体質のツケがあるのである。その為自衛隊の車両も全て(なぜか機動戦闘車だけ全幅が2.98mだったりする)全幅が2.5mまでと制限を受ける為、諸外国の装輪装甲車と比べて窮屈な車体になってしまうのである。

車体の全幅が2.5mまでと制限されてしまっては車体を昨今の装輪装甲車では必ず採用している対IED対策用のV字底面にしたら自然と面長で重心が高いという非常に不安定かつ将来の発展性を持たせる為のスペース確保が出来づらい車体になってしまい、結果的に派生型の種類も限られてしまう恐れがある。

さてここで自衛隊の装輪装甲車と諸外国の装輪装甲車の主要諸元がどの程度違うのかを見ていただきたい。

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諸外国の装輪装甲車の全幅が2.7~3.0m近くあるのに比べて日本の装輪装甲車の全幅がいかに狭いかお分かりいただけたと思う。いい加減防衛省国土交通省などの所管省庁は自衛隊車両への無意味な車両制限令の適用を辞めるべきである。

あくまで国内でしか使用しないだろうという意識が見える車両

さて次に装輪装甲車(改)について公表された情報に基づいて不安・懸念される2点について述べたいと思う。

今回、防衛装備庁が公開した装輪装甲車(改)の写真の中で気になった物がある。まずはその写真を見ていただこう。

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装輪装甲車(改)の車内の写真であるが気になったのは隊員が座るシートがIEDや地雷対策で今や当たり前となっているフローティング・シートではなく通常のシートである点である。

諸外国の装輪装甲車では最早標準装備といっても良いフローティング・シートではなくなぜ普通のシートにしたのであろうか?これでは車体にいくら対IED・地雷対策が施されていても触雷した場合、爆発の衝撃で中の隊員が車内の物や他の隊員と接触し負傷する危険性が非常に高いと言わざるを得ない。

ネット上では「自衛隊が戦うのは主に国内で、国内にIEDや地雷が埋設されている状況は考えられないから問題ない。」という声もあるが、例え国内での戦闘でIEDなどの攻撃が考えられないからといって可能性がゼロではない以上かつ隊員の生命保護を考慮すればあらゆる状況を想定して兵器を開発をするのが当たり前であるのだから量産型ではフローティング・シートに仕様を変更すべきである。

まあそもそも、当の開発者本人が開発概要でPKO派遣や離島防衛等の各種脅威に対応するために開発したと言ってるのですがね。

装輪装甲車(改)は、陸上自衛隊の現有96式装輪装甲車の後継として、国際平和協力活動、島しょ部侵攻対処等に伴う各種脅威に対応するため、防護力の向上を図った装輪装甲車(改)を開発しました。

次の懸念点を述べる前にまずこれまた防衛装備庁のサイトにて公開された装輪装甲車(改)の動画をみていただきたい。

 

www.youtube.com

動画内で装輪装甲車(改)には標準型・通信支援型・施設支援型と基本型の他に2つの派生型が存在する事が分かる。これは96式装輪装甲車の開発時に車体のファミリー化を考えていなかった反省からなのかはわからないが陸自も少しは車体のファミリー化を考える様になったみたいであるがこの動画では派生型として開発されるのかわからないタイプが2タイプある。

それはICV型と装甲救急車型の2タイプの派生型である。装甲救急車型については他の方に解説していただくとして私が装輪装甲車(改)をもし配備するのならICV型も同時に開発・配備すべきと考える。

その理由は装輪装甲車(改)を将来PKO派遣での車列警護や警戒時、国内では下車歩兵の火力支援として使用するのならば少なくとも30~35mmの機関砲を備えたICV型が必要であると思うからである。諸外国の装輪装甲車ではICV型の派生型を開発するのが当たり前であり、フィンランドAMV装輪装甲車のICV型などは35mm機関砲に加えてスパイク対戦車ミサイルを搭載するタイプを開発している事などを考えると、陸自も装輪装甲車(改)にICV型の派生型を加えるべきである。

ただし装輪装甲車(改)の写真を見る限りただでさえ車高が高いのに更に機関砲塔を搭載した場合、完全にトップヘビーな状態になり旋回時の横転の危険性や敵からの被発見性が高くなる事が懸念される。

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35mm機関砲を搭載したAMV35歩兵戦闘車

そもそも国産の装輪装甲車(改)を開発する必要があるのか

ここまで装輪装甲車(改)について述べてきましたが、そもそも今更国産で装輪装甲車を開発する必要があるのかと筆者は疑問に思う。

世界を見渡せば(まだ配備もされていないが)装輪装甲車(改)よりも防護・火力等の性能面や派生型の豊富さ、そしてコンバットプルーフの点で優れた装輪装甲車は数多あり多額の開発費をかけて中途半端(になりそう)な性能の装輪装甲車(改)を作るよりも海外製の装輪装甲車を購入した方が金銭面でも隊員の生命保護の観点からも良いと私は思うのである。

兵器を開発する為の防衛費は国民の税金により賄われており防衛費も決して無尽蔵では無い事を防衛省自衛隊は自覚しないといけないでしょう。

また兵器の開発にあたってはまず

・なぜその兵器が必要なのか?

・その兵器が必要な場合どの様な兵器にすべきか?

・その兵器を開発したとしてどの様に運用すべきか?

・開発には幾らかかるのか

・どの程度の期間でどの程度調達すべきか?

これらを明確にしておかなければ兵器開発は上手くいきませんし兵器を開発してもその兵器の運用方法や運用思想が無ければ宝の持ち腐れとなってしまいます。そして陸自に限らず防衛省自衛隊は今までこれらの事を明確にせずに「まずは開発してしまえ!運用方法を考えるのはその後だ!」と言わんばかりに兵器を開発し五月雨式に生産するという悪弊がありました。

その結果がどうなっているかは言わずもがなでしょう。最後になりますが最初から国産開発ありきの現在の自衛隊の兵器開発は早急に辞めるべきと私は思います。

*参考サイト及び文献

・防衛装備庁:

http://www.mod.go.jp/atla/index.html

・現代ロテム(K808 8×8装輪装甲車のデータ参考):

https://www.hyundai-rotem.co.kr/Business/Machine/Business_sub.asp?d1=2&d2=1&d3=2

・「世界の最新装輪装甲車カタログ」発行:アリアドネ企画 発売:三修社

・「2016-2017 ROK Military Weapon Systems」発行:DEFENSE TIMES社

(K808 8×8装輪装甲車のデータ参考)